昨日は食器洗いを私がやって、たくま君が洗濯物をたたんでいた。
台所にいたら、居間のたくま君が
「ひょうっ!!!」
と奇怪な声をあげた。見ると、
黒くてでかいものがエアコン方面へとバタバタ浮遊していく!!
「ぎゃあああぁぁ( ゚Д゚)!!!」
「何あれ?!ゴキ?!」
「わかんないよ!!洗濯ものから飛び出してきたんだよ!!」
ここに引越してきて、4年になるが、ゴキブリを見たのは初めてだったので、二人とも震え上がってしまった。
「捕まえて!!!男でしょ!」
「いつも男女平等っていってるくせに、こんなときだけ男女格差?!」
二人で押し問答をしてるうちに、ゴキはエアコンの隅のほうへとどんどん隠れていく。
「見えなくなっちゃうよ!!捕まえなかったら今日眠れない!!!
早く殺して!!」
「いやだ!僕にはできない!!僕はゴキブリが大っ嫌いなんだ!!」
そういうと、たくま君はゴキブリが大の苦手となった経緯をまくしたてた。
「昔、『世界びっくり人間』って番組でゴキブリを食べた男がいたんだ!!
そいつは何日か後にひどい腹痛になり、病院で腹を開けてみたら、無数のゴキブリが大繁殖してて、結局死んじゃったんだ!!
僕はその話を聞いてから、ゴキブリを見るだけで、うごめく奴等を想像してしまって気持ち悪くなっちまうんだ!!」
「うるせぇぇ!!
知ったこっちゃねぇよ!!
いいから殺れ!!」
たくま君は同情を乞うように熱くゴキブリ苦手論を語ってくれたが、私のハートには響かなかった。
代わりにうだつのあがらないたくま君への怒りとゴキへの恐怖からサイヤ人になった。
だって、私もゴキブリだけは大の苦手だから。
自らの手を汚すことだけは
死んでも避けたい!!
二人とも悲鳴に近い声をあげながら、小さな黒い物体の処理について議論した。
結局、ダニアースがあるから、あれをふりかけてみようとの話になり、私はたくま君にダニアースを握らせた。
「ええ??!!僕、代表?!」
「あたりまえだろ!!!」
後ずさりするたくま君の背中をエアコン前へと押し出す。
「やめてぇぇ!!押さないで!!!せめて僕のリズムでいかせて!!」
「ゴキ、殺すのに、リズムもクソもねぇだろう!!」
私はもう一度背中をドン!と押すと、台所へ避難し、たくま君の様子を見守った。
「ひぃ〜〜!…ひぃぃ〜〜!」
変な声をあげ、手をプルプル震わせながら、彼は小さなエイリアンにダニアースの照準をあわせ、そして発射した!!
私は黒い物体がエアコンの隙間から落ちるのを一瞬見た。
それと同時に、たくま君は
「おわあああぁぁあぁぁぁぁ!!!!」
と叫び声をあげながらこちらに突進してきた!!
それを見た私も悲鳴をあげ、二人で台所を駆け抜け、奥の寝室へと逃げ込んだ。
「取って!!取って!!
僕にむかってきたんだ!!あいつ!!
付いてるでしょ?!付いてるでしょ?!」
「えええ!? ウソ!?来るな!!
近寄るな!!!」
そして二人でワアワア言いながら、部屋の中をぐるぐる走りまわった。
やがてたくま君は自分の身体にゴキがいないことがわかると落ち着きを取り戻し、こう言った。
「あいつはまだ死んでない…」
二人で恐る恐る居間に向かった。静まりかえった居間にゴキの気配はない。
「どこかへまた隠れた…?」
「きょんちゃん、お願いだ!あいつを倒すにはもう連携プレーしかないんだ!!
いつも通り、男女平等で!!」
そういうと、たくま君はダニアースを私に託した。
「うぇぇ!?嫌だ!!」
私は半泣きになったが、
たくま君はすでに涙を流していた。
「このままあいつと一緒に
暮らす気か(涙)?!」
恐怖で神経のどっかの糸がキレたのだろうか?
急に男らしくなったたくま君は、居間のあちこちをそろりそろりとひっくり返し始めた。
「僕が家具を持ち上げる。見つけたらきょんちゃんがすかさずスプレーだよ!!」
私も腹をくくって、この作戦に身を投じることにした。
いろんなもんをひっくり返し、そしてソファを持ち上げたときだった。
奴がいた!!!
「きょんちゃん、スプレー!!!」
「う…う…!!」
結局、私はあいつが飛ぶんじゃないかという恐怖のあまりダニアースの引き金を引くことができなかった。
急遽、私がソファ持ち上げ役、たくまくんがダニアースでの攻撃役に回り、再び戦いを挑んだ。
黒いエイリアンは最初のたくま君の攻撃で、ダメージを受けていたのか、羽のあたりがぐしょぐしょになってた。
「きょんちゃん見るな!!!」
たくま君は男らしく叫ぶと、一気にダニアースを噴射した。
噴射して噴射して噴射しまくった。
「ぬぅおおおおおおおおおおおお!!!」
まさに阿修羅のごとく…。
彼はたくましかった。
やがてゴキの動きは完全に止まり、たくま君は素早い動作で丸めたチラシを使って、我々を苦しめた黒い小魔王をゴミ袋へと詰めたのだった。
我々の戦いは終わった。
たくま君は汗びっしょりだった。
彼は感極まって、私に握手を求めてきたが、私は静かに
「先に手を洗ってください。」
とだけ伝えた。
「1匹いたら、10匹はいる…」
そうアゴをがくがくいわせながら、つぶやいたたくま君の指令により、本日、私は薬局に
武器の調達にでかけ、大量のゴキブリホイホイを部屋の各所に設置する予定です。
そんな我々ですが、本日、
結婚(入籍)記念日です…。











