2005年08月04日

スパナ先輩

大学1年のときに同じサークル内の4年の先輩で成沢さんという人がいた。

ある日、ユウミさんと部室にいくと、先輩たちがたむろっていたので、
私らもお茶を入れて、一緒に談笑していた。

成沢さんが「俺が1年のとき、すごい苦労をしてね〜」なんて話し出したので、

「どんな苦労をされたんですか?」
って一言聞いたのが地獄行きの始まり。


うんちゃかんちゃらと長々と話をされたが、要は、いろんなサークルに入ったけど、
どこにいっても人間関係がうまくいかず、辛かったということなのだが、
くどくどとどうでもいい説明をまじえながら聞かされ、
40分は経過したであろうか?

「もううんざりです。聞きたくありません」
ということも出来ず、私は必死に軽いリアクションをとりながら、話を聞いた。


話を終えた成沢さんは非常に満足気だった。


そしてその日以来、やたら成沢さんが私になれなれしく接してくるようになった。

ある日、私はチャリの調子が悪いので、今日は弟のチャリを借りて、学校に来たんだって話をユウミさんにしてたら、

どこから聞きつけたのか、帰り道、宮城野大橋の手前に
ぼ〜〜っと成沢さんが立っていた。


「や!きょんこちゃん!」


「は??成沢さん、何でこんなとこにいるんですか?ご自宅この辺でしたっけ?」


「いや、きょんこちゃんがこの辺に住んでるって前に話してたの覚えててね。

自転車を直してあげようと思って、ここまで来たんだ


そういうと、私が自宅に向かうのに、寄り添うようについてきた。

駅からけっこうな距離なのを、ここまで来てくれたのに、むげに「ノーセンキュー!」ということも出来ず、私はそのまま成沢さんを連れて帰宅した。


成沢さんを見ると、うちのばあちゃんが喜んで、

「きょんちゃんが男の子連れてくるなんて、初めてねぇ!」

とやたらと茶菓子を出してきた。


田舎の家族なので、好奇心旺盛で妹やら弟やらもみんな急な来客を覗き見に来た。


いよいよ自転車修理だ。
物置から私の壊れた自転車をずるずると出してきて、


「チェーンが外れてるだけだと思うんですが…。
近所に自転車屋あるから、今日、持ってこうとは思ってたんですけどね」



と言いながら成沢さんに自転車を渡した。
自宅の工具を出そうとしたら、「いや、大丈夫」と成沢さんは言い放ち、

ジーパンのポケットからスパナを
引っ張り出した。



「?!
持ち歩いてるんですか?!」



「いや、とにかく何か道具が必要だと思って、家からこれだけ持ってきたんだ」


スパナ1本で何をどうしようと思っていたのか…?


10分ほど成沢さんはチャリの周りをスパナを持って、ぐるぐる回って、最後に

「無理みたい」


と言った。
横でアイス食ってた妹が大笑いした。

もろきゅうを食ってたちっちゃい弟は味噌を手にとって、

「や〜〜い!!うんこ!!」

と言って、成沢さんの袖につけた。


私は軽く弟をたしなめながら
「いえ、いいんですよ。
(最初から期待してなかったし。)自転車屋に持って行きますから」


努めて冷静に穏やかに答えた。

こんなことがあってから、妹や弟は成沢さんのことを軽く馬鹿にした感じで
「スパナ先輩」と呼ぶようになった。


よくわからないけど、
急速にスパナ先輩は我が家と勝手に親密な関係を築いていった。


ある日、帰宅すると、スパナ先輩は縁側でばあちゃんとスイカを食べていた。

またある時は、私よりも先に家族と夕飯を食べていた。

また別の日にはうちの愛犬ハッピーと
戯れていた。




成沢さんのなれなれしさは日増しに激しくなり、誰も頼んでないのに、


「授業終わるの待ってるから校門で待ち合わせね」とか言い始めた。


「ヨドバシで買い物するから、いっしょに来て」

と言われたとき、とうとう私は

「嫌です」

と言った。

「え?なんで?今日は都合が悪いの?」


「都合とかそういうんじゃなくて、何で私が成沢さんの買い物に付き合わなきゃいけないんですか?」


「だって、俺たち付き合ってるだろ?」


((((;゚Д゚))))エエエエエエエエエエエ?!


「付き合ってませんよ!いつそんなこと言いましたか!!」

今まで感じてた不思議な点をぐわぁぁぁっと語ると、成沢さんは


「じゃあ、今までは一体、
何だったんだよ?!」



と捨て台詞を吐いた。

それはこっちの台詞だ。


その後、先輩は二度と私の前に姿を現さなかった。

このことを一番悲しんだのは、ばあちゃんだった。

我が家にはスパナ先輩の忘れ形見のスパナだけが取り残されたのだった。

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先輩、ちゃんと就職決まって頑張ってますか?あの時は私ももっと早く誤解を解かなくてごめんなさい。
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posted by きょんこ1210 at 16:11| Comment(5) | TrackBack(0) | 思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うーん、スパナ先輩が人間関係うまくいかずに苦労する理由がわかりますね
いろんな試練???こえて人間は成長していくわけでして。

チェーン外れているだけなら、道具なしでも気合でどうにか修理できそうなきもするけが〜
Posted by ふれ at 2005年08月04日 20:14
そん時はちっちゃいけどパンクしてるのも見つかって、結局おじいちゃんに直してもらいました。
成沢さんは横で一緒に修理する様子を眺めていました…。
Posted by きょんこ1210 at 2005年08月05日 12:35
妹、弟最高です。特に妹さん。
目に浮かぶようで、おもしろすぎ。
Posted by 127 at 2005年08月05日 19:45
127さんへ

妹はかなりの毒舌女ですが、面白いです。
私よりしっかりかつちゃっかりしていて、
昔からいろいろフォローしてくれました。

引っ越したときもソファーを買ってくれたよい子です。
Posted by きょんこ1210 at 2005年08月06日 21:54
はじめまして、きょんこさん。
「ワラタ2ッキ」から飛んできたんですけれど、「スパナ先輩」にも笑わせてもらいました。

>私は軽く弟をたしなめながら
>「いえ、いいんですよ。
>(最初から期待してなかったし。)自転車屋に持って行きますから」
>努めて冷静に穏やかに答えた。

その場に居合わせてたら、僕なら大爆笑ですね。
きょんこさんはエライ!
Posted by マサヤ at 2005年08月08日 19:51
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