2005年09月05日

ダビデにパンツをはかせた夏

中学の同級生にすごく寡黙な石田くんという男の子がいた。
髪はちりちりとした天パなのだが、その髪はふわふわした感じはなく、まるで
偉大な彫刻家が作り上げた芸術品のような質感を持っていた。

顔もどちらかというと耽美な面立ちで、目鼻立ちはくっきりしていた。
私は歴史の授業で教科書にミケランジェロのダビデ像が出てきたときに、一目で

「石田君だ!」

と思った。

そして惜しみもなく裸体をさらす「石田君」を見ていられない思いで、
シャーペンで中心から黒く塗りつぶし、パンツを履かせてやった。

1073.jpg

当然、自分が発見した事実(石田君はダビデ像に似ている)をあすかちゃん、沙織ちゃん、瞳ちゃんの仲間たちに大ニュースとして伝えた。
皆、同意し、その日から我々の間では
石田君を「ダビデ」と呼ぶようになった。

ダビデは声を発しない人間だった。
本当に彫刻のごとく、モーションのない人間だった。

ダビデは窓際の席だった。
休み時間になると、カーテンにくるまって、下界をシャットアウトする。

カーテンの中はダビデだけの世界。
めくるめくルネサンスの世界。



ある日、先生に配布されるように言われたプリントに名前のないものがあった。
みんなに「これ、誰の〜?」と聞いて回りながら、ダビデにも尋ねてみることにした。

私は勇気を出してカーテンにそっと近づき、

「ダビ…いや、石田君、このプリント石田君の?」

と問いかけた。

カーテンの中のダビデの表情はうかがえなかったが、すっと白い手がのびて、プリントを奪うと、しばし間があって、カーテンが横にゆれ、プリントはダビデワールドから変換された。

「ダビ…石田君のじゃないってことだね…?」

カーテンがかすかに縦に動いた気がした。

「わかった。ありがとう。」


そんな孤独のランナウェイをひた走るダビデだったから、仲のいい友達などほぼいないようだった。
たまに「小宇宙」こと杉浦君がダビデに寄り添っていたので、彼が友人だったのかもしれない。


そんな静かな時間とともに生きるダビデが一躍みんなの注目をあびる事件が起きた!!

月曜の朝会のとき、みんなで列になって並んで校長の話を聞いてるときだった。
その日の校長の話はいつもより長かった。

体育館の中で、校長の声と小さなムダ口が響きあう中、突然、

ドダーーーーーーーーンっ!!!

と音がした。すぐ後ろで何かが倒れたようだったので、振り返ってみると、
ダビデがまさにダビデ像のごとく硬直した状態で泡をふいて倒れていたのだ!!


わーー!!わーーー!!
泡ふいてる!!
漫画で泡ふいて倒れる人はよく見るけど、ほんとに泡ふいてる人見たのは初めてだ!!!
わーー!!



みんなざわつきながら、ダビデの顔を覗き込んでいる。

「誰、誰??」

「6組の石田とかってやつだって」

「顔、真っ白だぞ!!」



ダビデ、一躍有名人!

体育の先生がかけつけると、ダビデはおんぶされて、保健室に連れて行かれた。

こうして平穏をひたすらに祈るダビデの願いむなしく、低血圧により気を失い、皆の前で倒れるばかりか泡までふいてしまうという大失態をさらしてしまった。


2時間目の休み時間に保健室から戻ってきたダビデはみんなに心配されて

「大丈夫?」
「どうしたの?」


と話しかけられまくりだったが、迷惑そうに眉をひそめ、すぐカーテンの中に入ってしまった。


卒業するときに、文集の中の1ページに「みんなの夢」というページがあり、そこのダビデの欄を見ると、「単細胞になりたい」と書いてあった。


単細胞…。
ミトコンドリア?アメーバ?
夢は彫刻じゃないんだね、ダビデ…。



石田君は今、どうしてるんだろう?
まさか単細胞にはなってないだろう。


私の予想では、今日もどこかの職場のカーテンの中に身を潜めていると思う。

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人生思い悩むことがあったら、まずはカーテンの中に入ってみようよ
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posted by きょんこ1210 at 21:11| Comment(3) | TrackBack(0) | 思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ふれの中学校の先生で髪の毛がベートーベンみたいになっている地理の先生がいました。
あだ名はそのままですし、パイナップルとか言われた時もあったようです。

彫刻の裸にパンツや靴下履だけはかせると、とてもエッチなイメージに・・・
Posted by ふれ at 2005年09月05日 21:34
いや〜、人事ながらダビデ君のその後が
気になりますね〜〜(ーー゛)

意外と今頃は一流のカーテンデザイナーとして
大活躍されているかも?

高校の時に『火星人』というあだ名の先生がいました。 
授業中に友人がうっかり、
「火星先生!ちょっと質問が・・」と言ってしまい、
こっぴどく怒られてました(*_*)
Posted by パチ男 at 2005年09月05日 23:22
みんなそれぞれ思い出のあだ名があるんだね。

めちゃくちゃあだ名が進化した人もいたよ。
他人まで巻き込んで。

サナダくん(アゴが出てる)⇒アゴ⇒AGO⇒エージーオーだからエジオ

*別派生版

アゴ⇒ゴア⇒衝突安全装置

もはや何者かわからない



サナダくんそっくりの転校生(女子)がやってきた。⇒あだ名はサナ女(サナジョ)に決定⇒一部アゴ女(アゴジョ)と呼ぶ。⇒ゴア妻(ゴアサイ)⇒衝突安全装置

また何者かわからなくなる


これだけあだ名が変化する例もそうそうないと思う。本人も落ち着かなかっただろうな。
Posted by きょんこ1210 at 2005年09月06日 17:13
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